その日は朝から風が強かった・・・
ペットのアジアアロワナを貨物に預け、同じ便に搭乗
那覇から鹿児島への、わずか1時間余りのフライトだった
離陸して間もなく、機体は上下左右に大きく揺れ始めた
スチューワデス(当時はまだそう呼んでいたと思う)の放送も空しく、
機内のあちこちで女性客の悲鳴が上がる
仕方ないものね、強風警報が発令されているのだから・・・
もう少し我慢したら高度も上がり、揺れも少なくなるよ・・・
しかし、その思いは甘かった
水平飛行に移っても揺れは続き、機内備え付けのマガジンを
読もうにも、文字が目に止まってくれない
しかも、アロワナ用の餌である200匹のコオロギが、足元の袋の中で合唱を始める始末
突然のコオロギの合唱に、乗客がざわめく・・・
スチューワデスをコールする人まで・・・
内心「ごめんなさい」と思いつつも、知らん顔して袋を軽く蹴る
蹴ると泣き声が止むものの、しばらくするとまた合唱が始まる
合唱が始まるとまた蹴る・・・これの繰り返しだった
やがて飛行機は霧島連山を右に、鹿児島空港を左に見て着陸態勢へ
空港をかなり過ぎたところで左へ大きく急旋回し、ファイナルへと進む
揺れはさらに激しくなった
キュキューッ
左車輪が滑走路にタッチダウン・・・そして右車輪・・・
少し間をおいて前輪がタッチダウンした
皆さんの安堵の声・溜息・・・そして、隣の席のお兄さんが
コブシを握り、右腕に力を込めて思いっきりガッツポーズ
「そうかぁ〜、このお兄ちゃん・・・恐かったんだぁ〜・・・」
コオロギに気を取られていたので、恐怖は感じなかったものの、
ず〜ッと激しく揺れっぱなしだったことは覚えている
あんな悪条件の中、乗客を安全に目的地まで運んでくれた機長始め
乗務員に対し、敬意と感謝を込めて、立ったつもりで一人
スタンディング・オーベーション
忘れ得ぬ小旅行となった
ちなみに、魚も乗り物に酔うんだね
だって、フライト前に食べさせた餌のコオロギ・・・
アロワナちゃんは全部吐いていたもの・・・・・・・・
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